二輪自動車整備士 学習内容

【三級二輪】第2章 エンジン

この章からオートバイの具体的・直接的な構造についての話になります。シリンダヘッド、シリンダ、クランクケース、ピストン、クランクシャフトなどエンジンを構成する主要部品をそれぞれ学習します。

第2章 エンジン

エンジン本体

シリンダヘッド、シリンダ、クランクケース、ピストン、コンロッド、クランクシャフト、フライホイール、バルブとバルブ開閉機構などエンジンを構成する各部の構造の話です。

ピストン、ピストンピン、ピストンリング

ピストンについての記述は細かく、重要箇所であることがわかります。

ピストンの形状(ヘッド部よりスカート部の径が大きい円錐形であるとか、下から見た時に、実は真円でなく楕円であるとか)、ピストンピン、ピストンリングの名称(特に「厚さ」と「幅」)・構成(コンプレッションリングとオイルリング)など。

今回自分の受けた登録試験(令和4年 第106回 三級二輪自動車)でも、「ピストン・ピンは、両端よりも中央が薄く作られている」という細かな部分が問われ、「え、そこ?」と面喰らいました。まったくのノーマークでした(汗;)。

ちなみにこれは「×」で、ピストンピンの中央は厚く作られています。ピストンからの大きな力を受ける部分であるから、です。

コンロッド、クランクシャフト

そしてコンロッドとクランクシャフトの話。最後の最後まで自分的最難関箇所でした。

テキストも写真の通り、何回も何回も読み返してマークしているので、大変にひどいことになっています。学習中、「ムリ、コンロッド、ムリ」とずっと言っていた気がします。

何がこんなに難しかったのだろうと今更ながら分析してみると、こうなります。

  • コンロッド(特殊鋼)、キャップボルト(特殊鋼)、コンロッド・ベアリング(トリメタル、アルミ合金メタル)、クランクシャフト(特殊鋼、炭素鋼、特殊鋳鉄)の材料が覚えられなかった
  • コンロッド大端肩部のジェット穴、小端部のオイル供給穴、クランクシャフトの油路が、どこをどう冷却するのかイメージできなかった
  • コンロッド・ベアリングとジャーナル・ベアリングを混同した
  • バランス・ウェイト(回転部分の質量のアンバランスを取り除く)とフライホイール(燃焼で変化する回転力を平均化する)の機能を混同した

今思うと、全部を全部、端から端まで押さえる必要はなかったかもしれません。わからないわからないで躍起になって、ドツボにハマり込んでしまいました。

そして本番では一問も出なかった、というオチ付きです(涙;)。

バルブ、バルブスプリング、バルブシート、バルブ開閉機構

バルブ周りは完全に頻出箇所で、ここはもう絶対に押さえておかねばなりません。

まずはバルブ本体とバルブ周りの各部名称。バルブ、バルブガイド、バルブスプリング、オイルシール。バルブステム、バルブフェース、バルブシート。バルブシートリングの「冷やしばめ」も、ここで出てきます(笑)。

それからバルブ開閉機構。カムチェーン、カムシャフト、カムスプロケット、ロッカアームの仕組みを押さえます。

頻出問題は

「クランクシャフト1回転でカムシャフトが何回転するか?」

カムスプロケットはクランクシャフトスプロケットの2倍の大きさ(歯数)なので、クランクシャフト1回転で、カムシャフトは1/2回転です。これも念仏のように唱えることとなります(笑)。

潤滑装置

エンジンオイルの話です。

「全流ろ過圧送式」

我々の4ストエンジンに広く使用されているのは「全流ろ過圧送式」という方式で、エンジンオイルすべてを、ひとつのオイルフィルタでろ過して、エンジン全体に供給します。

この「全流ろ過圧送式」の、オイルが潤滑する順番は頻出です。

オイルストレーナ→オイルポンプ→オイルフィルタ→オイルギャラリ

オイルポンプが先、オイルフィルタが後。オイルポンプが先、オイルフィルタが後です。重要なので繰り返しておきます。

オイルポンプ

オイルポンプは「トロコイド式」というもの。インナロータとアウタロータが偏心して組付けられており、クランクシャフトの動力でインナロータが回転、ついでアウタロータが同方向に回転します。歯と歯の間にできる空間が随時変化することで、吸入と吐出を行います。

オイルフィルタ

オイルフィルタは、カートリッジ式でもエレメント式でも、オイルの流れる方向が重要です。

エレメント外周から内側へ流れてろ過され、フィルタ中央からオイルが出ます。

オイルの流れは外から中、外から中です。

ちなみにフィルタが目詰まりしてもエンジンオイルが潤滑できるように、バイパスバルブという機能がついています。

冷却装置

ウォータポンプ、ラジエータ、サーモスタット、電動ファンの話です。

ラジエータ

ラジエータは、エンジン内の高温の冷却水を、(走行風で)冷却する働きをします。

試験では、ラジエータ本体よりもラジエータキャップ、というよりも、そのキャップの仕組み(プレッシャバルブとバキュームバルブ)が出題されます。具体的には以下のような仕組み。

冷却水の温度が上がってラジエータが規定圧力以上になると、プレッシャバルブが開いて圧力を調整し、冷却水はサブタンクへ流れます。

温度が下がってラジエータ内が負圧になると、バキュームバルブが開いてサブタンクから冷却水が戻ります。

ちなみに不凍液(クーラント)の凍結温度についても、よく出題されます。

冷却水の凍結温度は、不凍液混合率「60%」の時に、最も低くなります。

サーモスタット

サーモスタットは、冷却水の温度が低い時は水路を閉じ、温度が高くなると開いてラジエータへ冷却水が循環するよう作動します。

このサーモスタットの作動は(カリキュラム内の)実習でも行うもので、ビーカーに吊るして熱し、「規定温で開くか、規定のリフト量があるか」確認します。原理的には、固体のワックス(ペレット)が、熱により膨張・収縮することで、バルブを開閉します。

サーモスタット本体の各部名称(スピンドル、ケース、ペレット、スプリング)も頻出です。

燃料装置

キャブレータの仕組みと構造。

名称も構造も結構細かいので、実際にキャブレータの分解整備をしたことがないと苦戦するかもしれません。

それぞれの系統に分けて、簡単にまとめてみました。

フロート系統。ガソリンタンクから送られてきた燃料の油面を、常に一定に保つ。フロート及びフロートバルブの名称、その動作。

スロー系統。エンジン低速回転時に必要な燃料を供給する。アイドルポート、バイパスポート、パイロットスクリュ、スロージェット、スローエアジェット。キャブレターのどの部分に何がついているのか、アイドリング時の燃料の流れなどを学習します。

メーン系統。通常走行時、高速・高負荷時に必要な燃料を供給する。メーンジェット、メーンエアジェット、ニードルジェット。ジェットニードル、ニードルジェットホルダ。スロー系統と同じく、どの部分に何がついているのか問われます。似た名称が多いので混同しないこと。ニードルジェットの位置(=ベンチュリ最狭部付近)は頻出問題です。

始動系統。濃い混合気を供給して始動性を向上させるもの。スタータバルブ(チョーク)を開けた場合の動き。スタータエアジェットから空気、スタータジェットから燃料が吸い込まれ、濃い混合気が供給されます。

吸排気装置

エアクリーナ

空気中のゴミやほこりを取り除くと主に、空気吸入音を低減させる役目があります。

エアクリーナーの種類は、乾式(ろ紙または不織布)、ビスカス式(ろ紙+特殊なオイル)、湿式(ウレタンスポンジ+オイル)の3種類。それぞれの清掃方法も出題されますが、特に「ビスカス式は清掃できないので、汚れたら新品交換する」点は頻出問題です。

エキゾーストパイプ、マフラ

エキゾーストパイプ内には「触媒コンバータ」が取付けられており、有害物質(CO、HC、NOX)を無害なもの(CO2、H2O、N2)に変換しています。マフラは排気ガスの温度と圧力を下げて排気騒音を低下させます。その他、排ガス浄化装置とブローバイガス還元装置の説明。

電子制御装置(FI、フューエルインジェクション)

あらゆる回転域で混合気と点火時期を最適に制御し、常に理想的な燃焼状態を作り出す電子制御装置。

オートバイの各部に備え付けられたセンサにより、コントロールユニット(ECU)が即座に演算、最適な燃料の噴射を行います。

現行のオートバイのほとんどが採用している機構のため、整備士試験でも当然のごとく【頻出箇所】となります。

FI独特の機能、インジェクタの各部名称(ニードルバルブ、プランジャ、ソレノイドコイル)や、アイドルスピードコントロールバルブの役割なども出題されますが、特に頻出は各センサ。

それぞれの名称と、何を検出・判別しているかまで押さえておく必要があります。

  • クランク角センサ
    点火時期、燃料噴射タイミング、エンジン回転速度
  • カム角センサ
    気筒の判別
  • 温度センサ
    検出部はサーミスタ。始動時の噴射量の決定など。
  • スロットルポジションセンサ
    スロットルバルブの軸角度
  • バキュームセンサ
    検出部は圧力センサ素子。インテークマニホールド内の圧力を検出。
  • 転倒センサ
    転倒した場合に速やかにエンジンを停止させる。

本試験での出題(令和4年 第106回 三級二輪自動車)

本試験で、この「第2章 エンジン」から出題されたものは以下の通りです。

「第2章 エンジン」(計6問)

  • ピストンピン・ピストンリング
  • バルブ機構
  • 潤滑装置(オイルポンプ・オイルフィルタ)
  • 吸排気装置(エアクリーナ・マフラ)
  • 電子制御装置(各センサ)
  • インジェクタの構造

 

【三級二輪】第3章 シャシ

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