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動力伝達装置
クラッチ
クラッチは、エンジンとトランスミッションの間にあり、エンジンの動力を伝えたり切ったりする役目をします。
クラッチの種類は色々ありますが、オートバイで一般に使用されているのは「湿式多板コイルスプリング式クラッチ」で、その学習がメインとなります。
クラッチの各部名称とそのパーツ形状、構造や作動も合わせて理解しておく必要があります。
クラッチ用語
- クラッチドライブプレート
- クラッチドリブンプレート
- クラッチプレッシャプレート
- スプリング
- プッシュロッド
- クラッチスリーブハブ
- クラッチハウジング
クラッチの構造と作動
クラッチハウジングとクラッチドライブプレート、クラッチスリーブハブとドリブンプレートは一体となって動作します。
ドライブプレートとドリブンプレートは、プレッシャプレートの「スプリング」の力で押し付けられるため、結果、クラッチハウジングとクラッチスリーブハブは一体となって回転し、エンジンの動力がトランスミッションに伝達されます。
動力が伝わらないようにするには、「クラッチを切る」動作が必要になります。クラッチレバーを握ると、プッシュロッドによってプレッシャプレートが外側へ押し出されるため、プレート間に隙間ができて動力が遮断されます。
トランスミッション
トランスミッションは、歯数の違うギアを組合わせることで、最適なトルクや回転速度で走行できるようにするための装置です。
歯数の違うギアを用いて、変速比(ギヤ比)やトルクを求める計算問題も出てきます。慣れないと少々難しいです。自分は練習問題でこのギヤの絵が出てくるたびにイラッとしました(笑)。

トランスミッション本体
オートバイで一般的な「前進6段ドッグ式トランスミッション」を学習します。
頻出箇所は、メーンシャフト(入力側)とカウンタシャフト(出力側)の伝達経路です。
メーンシャフトとカウンタシャフトには、それぞれ1速~6速に対応するギヤがついていますが、それぞれのギヤがどのような組み合わせで、どう動いてギヤが切り替わるのかを理解する必要があります。
テキストは図と文章で大変丁寧に説明されていますが、実物を見たことがないとイメージしづらいかもしれません。
整備士講習の中では、実際にエンジン(単体)を用いてチェンジペダルを動かしながら、ギヤが切り替わる仕組みを学習しました。Youtubeなどで動画を確認するのも良いかもしれません。
キック始動装置
「動力伝達装置」は、クラッチとトランスミッションだけでも相当に盛りだくさんなのですが、更にもうひとつ「キック始動装置」があります。
キックした時に「どういう順番で何が動いて、最終的にクランクシャフトに動力が伝わるのか?」ということなのですが、似たような用語が多くて、なかなかに小難しい(笑)。
順番をまとめると、以下の通りです。
キック始動装置の順番
- (キックスタータ)ペダルを踏む
- キックスタータが回転
- スタータドライブギヤ(スタータシャフト上)
- アイドルギヤ(カウンタシャフト)
- スタータドリブンギヤ(メーンシャフト)
- プライマリドリブンギヤ(クラッチハウジング)
- プライマリドライブギヤ(クランクシャフト)
アクスル及びサスペンション
フロントサスペンション
路面からの衝撃を緩和する役割があり、緩衝のためのスプリングと、減衰機能をもたせたショックアブソーバで構成されます。
減衰機能はバルブでオイル流量を変えることで行われ、減衰力は圧縮時よりも伸長時の方が強くなります
リアショック
コンベンショナル・タイプ(ツインショック)と1本ショックタイプ(モノショック)とがありますが、メインはモノショックタイプです。
モノショックは、車体の重心位置に近いため運動性能が良いこと、(スイングアームに直接取り付けるのではなく)リンク機構を介することにより、よりクッション性能が高く乗り心地が良いなどの利点があります。
ホイール及びタイヤ
タイヤは整備士試験で頻出箇所のため、テキストの説明も大変に細かなものとなります。
タイヤの構造
タイヤはトレッド、カーカス、ブレーカ(ベルト)、ビードから構成されます。
トレッドは一番外側の厚いゴム層、カーカスはタイヤの骨組みとなる部分で、コード布を交互に重ねて密着したものです。
バイアスタイヤとラジアルタイヤの違いは頻出で、このカーカスの交差方向が異なること、それぞれ補強体が異なること(バイアスコードはブレーカ、ラジアルコードはベルト)が挙げられます。
その他、ラジアルタイヤの特長(トレッドが薄いので放熱性に優れる、乗り心地は幾分悪い)、チューブレスタイヤの気密性(ライナ使用)、チューブやバルブが学習範囲です。
タイヤの呼称
タイヤの呼称はJISで決められており、以下の通りです。頻出です。
4.60 H 18 4PR
4.60 : 断面幅の呼び H : 速度記号 18 : リム径の呼び 4PR : 強度の呼び
170/60 R 17 M/C 72 H
170 : 断面幅の呼び 60 : 偏平比の呼び R : ラジアル構造 17 : リム径の呼び
M/C : モーターサイクル用 72 : 荷重指数 H : 速度記号
ホイールアライメント
「キャスタ及びトレール」の役割3つは頻出です。
ハンドルの操作力を軽減する
ハンドルを直進方向に安定させる
ハンドルに復元力を与える
ブレーキ装置
ドラムブレーキの話(リーディング・トレーリング・シュー式とツー・リーディング・シュー式)が最初にありますが、メインはディスクブレーキです。
固定型キャリパと浮動型キャリパ
固定型キャリパは「両押し」(キャリパの両側にピストン)、浮動型キャリパは「片押し」(キャリパの片側にピストン)です。
「片押し」といっても、片方からパッドを押しているわけではなく、ピストン側が押すと、液圧の働きでキャリパ自体が(ピストン方向へ)引かれる動きをするため、結果両側から力が加わり、「両押し」と制動力は変わらないとのことです。
その他、ピストンシールの自動調整機能(隙間の調整)、マスタシリンダの各部名称、仕組みも学習します。
ブレーキ液
ブレーキ液は頻出問題です。ブレーキ液の品質や取扱上の注意事項など、テキストにずらずらと列記されていますが、重要な点はひとつです。
ブレーキ液は水分に弱く、水分を吸収すると沸点が低下してベーパロック発生の原因となるので、定期的に交換が必要。
ベーパロックとは、過熱によりブレーキ液の一部が気泡になってブレーキが効かなくなる現象のことで、ドラムブレーキの「フェード現象」(過熱でブレーキが効かなくなる)との引っかけでよく出題されます。
本試験での出題(令和4年 第106回 三級二輪自動車)
本試験で、この「第3章 シャシ」から出題されたものは以下の通りです。
「第3章 シャシ」(計7問)
- クラッチの構成部品
- ドッグ式トランスミッション
- キック始動装置
- ホイール及びタイヤ
- フロントホイール・アライメント
- ディスクブレーキ(キャリパ)
- ドラムブレーキ
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【三級二輪】第4章 電気装置
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