再び群馬の森に戻る。まだ見ていないのは、「わんぱくの丘」「かたらいの丘」、ふたつの土塁跡だ。
「かたらいの丘」は整備されているので、普通の公園のように見えなくもないが、「わんぱくの丘」は違う。少なくとも、名前で想像するような楽しい感じではない。盛られた土は、ほぼ当時の姿を残す。
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群馬の森 「わんぱくの丘」
わんぱくの丘は、「田」型に4分割されている。盛り土に沿うように整然と並べられたシラカシ群は、いかにも人為的で不自然だ。「群馬の森」が整備された都市公園であることを思えば、なおさら違和感がある。建物群や射場跡と同じで、戦争の跡が色濃く残る。
土塁の外側は、どちらの丘もシラカシの密生度が激しい。尋常じゃない植えこみ方に見える。覆いかぶさるように枝葉が生い茂り、太陽の光を遮る。薄暗い。怖くなるくらいだ。
これほど植え込んである理由は「防火」に尽きる。生木は水分が多いため燃えにくい。火の粉や熱風を遮り、延焼防止の効果が高い。特にシラカシのような常緑広葉樹は火に強いとされている。10万人の死傷者を出した関東大震災でも、「生死を分けたのは防火林」といわれるほど、樹木の耐火効果は大きいのだ。
【参考文献】
(※)『陸軍岩鼻火薬製造所の歴史』菊池 実 著(みやま文庫 2007 P.44)
朝鮮人犠牲者の追悼碑
最後の遺構は、公園北東部にある「追悼碑」だ。強制労働で命を落とした朝鮮人犠牲者へ向けたものだ。左の銀色のプレートには「記憶、反省、そして友好」と刻まれており、「2度と同じ過ちを繰り返さない」という決意を表している。
(了)
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